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ドナン平衡

「水の分子生理」を読んでいたらドナン平衡の話が出てきましたので、書いてみます。
「水とはなにか」の方も、水の話がだんだんと生体に絡んだ話になってきて、複雑化してきました。


生体内ゲルの特徴は、その多くが負に荷電する解離基をもった線状の高分子であることです。
そしてその溶媒は、Na+イオンやCl-イオンなどを含んだ電解質駅であるため、ゲルの負電荷とイオンの間に静電相互作用が生じます

例えば、血管内と細胞間質においては、血管壁が剛直な壁となり、アルブミンなどの血漿蛋白質(負に荷電した高分子)を自由に通過させない為、血管壁は血漿蛋白質にとって半透膜として働きます
生体内ゲルではこの様に、高分子電解質溶液とイオン溶液が、イオンと水分子は自由に通すが、高分子電解質は通さない膜あるいは仮想上の膜により仕切られていると考えられます。

このような時の平衡は、ドナン(Donnan)の平衡として知られ、イオンは高分子電解質の持つ電荷の為に、不均一に分布します(ドナン分布)。
その結果、高分子電解質溶液中の総イオン濃度は、イオン溶液中に比べてわずかに多くなり、高い浸透圧を有します

Donnan

このとき、陽イオンは高分子電解質中に多く分布し、陰イオンは高分子電解質から排斥されます。
さらに計算により、高分子電解質溶液中の総イオン濃度>電解質溶液中の総イオン濃度、となります。

厳密には、イオンを含んだ高分子電解質ゲルの浸透圧は、高分子ポリマー鎖による体積排除効果と、ドナン分布にもとづく寄与の両方を考慮して、浸透圧Πは以下の式で求めます。

 浸透圧Π≒R×T×{ъ+(ν2÷(4×C))}×Cр2

  Cр:高分子のモル濃度、ъ:高分子電解質の大きさによる体積排除効果
  ν:高分子1分子あたりの電荷数、C:外液のイオンモル濃度

このため、高分子電解質の体積排除効果が大きく、1分子あたりの電荷数が大きく、外液のイオンが少ないほどゲルの浸透圧が高くなる事を示しています。



*高分子鎖による体液排除効果
溶液中で高分子鎖が占める体積は、溶液に高分子を加えたときに増加した体積として定義されます。
高分子鎖を含む溶液では、溶質や水分子は高分子鎖の絞める体積には入り込めない為総体積が決まっている場合は実質的にその分だけ小さい体積に分布することになり、実効濃度が増加する事になります。


参考・引用文献
水の分子生理:著者:上平恒、多田羅恒雄、出版社:メディカル・サイエンス・インターナショナル








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